はじめに
花粉症とは「花粉に対するアレルギーによって鼻や目に不快な症状を引き起こす疾患の総称」です。
医学的には、鼻の症状は「アレルギー性鼻炎」、目の症状は「アレルギー性結膜炎」といいます。
花粉症は、体が花粉を抗原として認定し、その人は「アレルギー体質」となり、
抗原である花粉が鼻の粘膜から体内に侵入し、
花粉の侵入を感知した生体は、免疫反応によって花粉を排除しようとします。
しかし、あまりに過剰な反応を示してしまい、鼻の粘膜は炎症状態となり、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった不快な症状を引き起こします。
花粉症は、異物(花粉)を排除する防衛反応「花粉を外に放出する(くしゃみ)」、「花粉を洗い流そうとする(鼻水)」、「花粉の侵入を防ごうとする(鼻づまり)」として理にかなった体の反応なのですが、程度が過ぎて非常に不快な症状と感じられている状態を指します。
花粉症の症状
代表的な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、涙目です。
鼻の症状(アレルギー性鼻炎)
- くしゃみ
- 鼻水>
- 鼻詰まり
目の症状(アレルギー性結膜炎)
- 痒み
- 涙目
- 目やに
- 目のゴロゴロ感
その他の症状
- 肌の痒み
- 頭重感
- うつ
- 倦怠感
花粉症の治療
1. 薬物療法
花粉症治療のメインとなるのは、薬物療法です。スギ花粉症では、花粉の大量飛散開始予測日の2週間前から内服を開始する「初期治療」が非常に効果的です。
花粉症だからといって誰もが皆同じ薬を飲めば良いというものではありません。一人一人の症状や体質 アレルギーの質によって使う薬は微妙に違ってきます。専門医の指示にしたがって正しい服用を心がけましょう。
2. 減感作療法( 免疫療法)
アレルギーの原因となる物質に少しずつ何回も触れると、その物質に対しては強いアレルギー反応を起こさなくなります。これを応用した治療法が免疫療法です。減感作療法、脱感作療法ともいいます。
免疫療法は以前からも行われていましたが、注射に通わなくてはなりませんでした。近年舌下免疫療法が保険適応となり、興味を持たれている方も多いと思います。これは注射のかわりに、経口用に調合したエキスを毎日舌下にふくんで吸収させる方法です。治療には定期的な通院が必要になり、治療期間は2年以上と長くなります。治療の有効性、効果の持続については今後の検証が待たれるところですが、身近に受けていただける様になった点は評価できると思います。
3. 外科的療法
レーザー治療(鼻腔粘膜焼灼術)
薬物療法を続けていても効果がなかなか感じられない方、眠気等でアレルギーの薬が十分に服用できない方、薬物治療を控えたい方(妊娠希望、授乳期の方、肝機能等がよくない方)にはレーザーで鼻の粘膜を焼く手術(鼻腔粘膜焼灼術)はおすすめです。
ただし、鼻中隔彎曲が相当強い方、鼻の中の粘膜が慢性的に高度に腫れている場合には、レーザー治療では効果が出にくいので、鼻中隔彎曲矯正術や粘膜を部分的に切り取る手術(下鼻甲介切除術)等を受けていただき、それでも鼻づまり等の症状が続く場合にはレーザー治療のおすすめとなります。
レーザー治療には炭酸ガスレーザー、アルゴンプラズマレーザーなど、いくつかの種類がありますが、炭酸ガスレーザーは術中の痛みや出血が少なく施行できます。当院では、炭酸ガスレーザー治療を行っています。
スギ花粉症では、通常花粉のシーズンが始まる1か月前、すなわち1月下旬までに治療をすれば、その後およそ1年間は症状が改善されます。残念ながら、効果は永続的ではありません。しかし、毎年受けていただいても安全な治療法ですので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
4. 鼻炎以外の花粉症の治療
目の花粉症は「アレルギー性結膜炎」として治療していきます。抗ヒスタミン点眼薬の投与が中心で、ステロイド点眼薬が併用されることもあります。
顔や首に発疹やかゆみには、外用ステロイド薬(軟膏、ローション)が効果的です。また光線過敏症、化粧品などによるかぶれは花粉症による皮膚炎と似ていますので、注意が必要です。
ここに注意!
スギ花粉が飛び交う時期は、かぜを引きやすい時期でもあります。かぜを引くと、そのために鼻やのどの粘膜が弱ってしまい、花粉症の症状をひどくさせてしまいます。さらには、細菌感染が加わって、急性副鼻腔炎へ発展してしまうこともあります。
また花粉症とかかりはじめの風邪やインフルエンザとは症状が似ているので、注意が必要です。
症状が強い時は、自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。