Bスポット療法について
Bスポット療法とは、上咽頭炎に対する治療方法です。
最近はEAT(上咽頭擦過療法)と呼ばれることもあります。
はじめに、上咽頭炎について説明します。
上咽頭炎とは
鼻とのどの間、ちょうど鼻の奥の突き当りで、口蓋垂(のどちんこ)の裏側の上を上咽頭といいます。
この部分は、口を大きく開けても直視できる場所ではないので、炎症があっても見過ごされやすい場所です。のどが痛いと訴える方ののどを観察しても、特に赤くなく、扁桃腺も腫れていない場合が多いのですが、内視鏡を用いて鼻の奥を観察すると、上咽頭に炎症が認められて、急性咽頭炎(上咽頭炎)として治療を開始したということはたびたびあります。
実際、上咽頭は内視鏡検査を行わない限り、観察できない場所です。
当院では、内視鏡検査に先端が極細の軟性内視鏡(電子スコープ)を用いておりますので、検査中の痛みはほとんどありません。電子スコープで詳細な観察と記録を行い、撮った画像はその場で患者様にも見ていただいています。
上咽頭炎には、かぜなどのウイルスや細菌感染による急性上咽頭炎、慢性鼻炎、慢性副鼻腔炎による鼻漏がのどに流れたり、滞留することで起こる慢性上咽頭炎、上咽頭の分泌腺開口部にのう胞がある場合に生じやすい慢性炎症である「トーンワルト病」などがあります。
症状としては、鼻とのどの間の痛みや違和感、乾いた感じのほかに、後鼻漏といって、粘性の分泌物が鼻の方からのどに流れるものが見られます。慢性炎症では、痛みはほとんどなく、唯一後鼻漏が主な症状になります。
治療は、薬物療法(抗生物質、粘液調整剤、消炎剤)、ネブライザー療法などが一般的ですが、当院では B スポット 療法にも取り組んでいます。
Bスポット療法について
Bスポット療法は、上咽頭に塩化亜鉛などの消炎剤を直接塗布しつつ、粘膜を擦過する(こする)治療法です。
これは、内視鏡検査が今日のように標準的でなかった時代に、「鼻の奥、のどの上の突き当りに塩化亜鉛の希釈液を塗布すると、のどの痛みなどの症状がよくなる」として、東京医科歯科大学名誉教授の堀口先生によって考案された治療法です。上咽頭は鼻の奥にあり、鼻咽腔(びいんくう)ともいいます。そこで鼻咽腔の頭文字「B」をとって、Bスポット療法と名付けられたとのことです。 急性期の上咽頭炎は、細菌感染によって起こっていることが多く、抗生剤内服等の治療が優先されます。しかし、慢性期の上咽頭炎では、抗生剤の効果はあいまいになり、むしろBスポット療法のような局所の治療(薬剤を直接炎症部位に塗布して消炎をはかる治療)は副作用がほとんどありませんので、継続することで効果が期待されます。
実際、慢性扁桃炎、慢性上咽頭炎が原因で発症するとされるIgA 腎症という腎臓病にBスポット療法を行うことで IgA 腎症が改善するとの報告もあります。
このように、この治療法は上咽頭の局所のみの治療法ですので、お薬ののみにくい方(たくさんお薬を飲んでいるのでさらに薬は飲みたくない方や、授乳中・妊娠中の方)も安心して治療を受けることができます。
治療方法は、1%塩化亜鉛液を口の中から曲がった長い綿棒「咽頭けんめんし」を使って、上咽頭に塗布します。鼻の中から綿棒で塗っていくこともあります。電子スコープを使って上咽頭をモニタで見ながら処置すると、より的確に擦過することができます。
上咽頭炎の強い方では、治療後に痛みが生じることがありますが、一時的です。そのあとで徐々に上咽頭の痛み、後鼻漏などが改善されてきます。
Bスポット療法はこんな症状に効果的
- 鼻水がのどに流れていく感じ(後鼻漏)
- のどの違和感
- のどや鼻の痛み
- 鼻づまり
- 咽頭痛
Bスポット療法の注意点
- 炎症が強い場合、処置直後の痛みを感じやすい治療となります。
- 炎症がおさまっていくにつれて、薬を塗った後の痛みや出血は改善していきます。
- 時々、治療直後は血の混じった鼻水や痰が出ますが、心配はいりません。
- Bスポット療法は、慢性期の炎症に特に効果を発揮しますが、疾患によっては、薬剤内服等の治療を優先させて補助的に行った方が効果が上がる場合があります。
Bスポット療法の実際を動画でご覧ください。
内視鏡(電子スコープ)を使って、上咽頭をモニタで見ながら、鼻腔から綿棒で塩化亜鉛を塗布しつつ、病的な粘膜表面を擦過しています。
Bスポット療法(内視鏡を用いて鼻腔から施行)
Bスポット療法は、EAT(上咽頭擦過療法)とも言います。ここでは内視鏡(電子スコープ)で観察しながら、上咽頭の粘膜表面を1%塩化亜鉛液を付けた綿棒でこすっています。口の中から行う方法もあります。繰り返し行うと病的な上咽頭粘膜が収れんして、炎症が緩和されます。