難聴とはどんな状態か
難聴とは、読んでその通り、聴力に難がある状態で、「聞こえない」~「聞こえにくい」状態をさします。
まず難聴の具合は、以下の問いかけにお答えいただくことで、ある程度伝わります。
- どちらの耳がより聞こえにくいか。あるいはどちらも同じように聞こえにくいか。
- どのくらい聞こえにくいのか。日常会話で困っているのか。ひそひそ話が聞こえない程度なのか。全く聞こえないのか。
- どんな音域の音が聞こえにくいのか。たとえば、体温計の音のような高音が聞こえにくいとか、低い男性の声が聞きとりにくいとか。
- いつから聞こえにくくなったのか。年齢が進むにつれて少しずつ聞き取りにくくなったのか、つい最近急に聞こえにくくなったのか、聞こえにくいときとそうでもないときが混ざっているなど。
- 聞こえにくいだけなのか。あるいは耳鳴りや、めまい・ふらつきもあるのか。
難聴の検査
まず、耳の診察(鼓膜~外耳道の観察)のあと、聴力検査(純音聴力検査)をいたします。
聴力検査では、ヘッドフォンを付けていただき、片耳ずつ聞こえを測ります(気導聴力検査)。同時に額や耳の下に音を振動で伝える端子を当てて、骨から耳に伝わる音の聞こえ方も検査します(骨導聴力検査)。このあとで、鼓膜の動きを見る検査(ティンパノグラム)も合わせて行うことがあります。
純音聴力検査は機械で作ったある周波数だけを含む「純音」を聞いてもらいますが、言葉の聞き取りがかなり悪いような場合は、実際にテープに録音した人の声をヘッドホンで聞いてもらって検査することがあります(語音聴力検査)。
これらの聴力検査は患者さんに一定の理解があって、検査に協力してもらわないと行えません。
乳幼児や、検査に協力が得られない場合などは、他覚的聴力検査といった方法があります。
聴力検査のほか、難聴の診断には、レントゲンやCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴) といった画像検査が有用な場合もあります。
難聴の原因について
音の聞こえの調べ方として、上に述べた気導聴力検査と、骨導聴力検査があり、この二つの検査の結果から、難聴の種類を次の3つに分けることができます。それぞれに原因となる主な疾患があります。それを併せてお示しします。
1. 伝音難聴
音が内耳に伝わるまでの過程である外耳道~鼓膜~中耳(耳小骨)に異常があって聞こえにくい状態です。
主な疾患としては下記が考えられます。
- 耳垢栓塞
- 鼓膜損傷
- 中耳炎(急性中耳炎・慢性中耳炎・滲出性中耳炎など)
- 耳硬化症
- 耳小骨離断 など
2. 感音難聴
内耳には蝸牛と前庭という二つの感覚器がありますが、音の振動は蝸牛に伝えられ、蝸牛にある有毛細胞により電気信号に変換されて、聴神経を通して最終的に大脳に達します。この蝸牛から大脳に至るまでの経路のどこかに異常があっておこる難聴です。
感音難聴の多くは蝸牛の障害によります。これを「内耳性難聴」とよび、
主な疾患としては下記が考えられます。
- 突発性難聴
- 音響外傷、騒音性難聴
- ストマイ難聴など薬物による難聴
- 細菌性内耳炎、化膿性髄膜炎
- メニエール病
- 加齢による老人性難聴
- 遺伝による家族性難聴
聴神経から大脳に至る部分に問題がある場合は「後迷路性難聴」と呼びます。
主な疾患としては下記が考えられます。
- 聴神経腫瘍、脳腫瘍
- 多発性硬化症
- 脳梗塞
3. 混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴が混在する難聴です。
老人性難聴や慢性中耳炎による難聴は混合性難聴である場合が多く、人によって伝音性難聴・感音性難聴の比率は異なります。
難聴の治療について
難聴を放っておくと、日常生活において大きな支障をきたします。
処置やお薬で治る難聴もあります。残念ながらよくなる見込みがないであろう難聴も、今後の経過観察は大事であり、難聴が進行して行くようであれば、精密検査が必要な場合もあります。
また最近では補聴器の開発もすすんでおり、目立たずに装用することができ、聴力を補うすぐれた医療機器といえます。高度難聴の方には、人工内耳の手術が有効な場合もあります。
難聴に気が付けば、できるだけ早く耳鼻科で診察、検査を受けることをお勧めいたします。
特に急性に発症した難聴の中には、急いで治療を開始すればよくなるものがあります。突発性難聴、低音障害型急性感音難聴、音響外傷、外リンパ瘻などの疾患が含まれます。
そのうちよくなるかと思って様子を見ていた、では治療開始のタイミングをのがしてしまい、回復する可能性が低くなってしまいます。
繰り返しになりますが、難聴に気が付けば、耳鼻科を直ぐに受診することが大切です。