中耳炎
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中耳炎とは

耳鼻咽喉科内藤クリニック 中耳炎とは

耳の構造は、外側から、耳介、外耳道、鼓膜、中耳、内耳、聴神経より成り立っています。
中耳炎は中耳の炎症です。以下の種類があります。

中耳炎の種類

耳鼻咽喉科内藤クリニック 正常鼓膜、急性中耳炎
耳鼻咽喉科内藤クリニック 滲出性中耳炎、慢性中耳炎

急性中耳炎は鼻かぜをひいた後に発症することが多く、耳が痛い、発熱、耳漏(耳だれ)などの症状を伴う中耳炎で、急性に発症した中耳の細菌感染症です。急性中耳炎が軽快し痛みや発熱がなくなっても、中耳の中に貯留液が持続している状態を滲出性中耳炎といいます。
また、徐々に鼓膜が奥に向かってへこんで中耳の壁に接着してしまったり(癒着性中耳炎)、鼓膜がへこんだところから、あるいは鼓膜穿孔のヘリから中耳内に上皮が侵入して真珠腫性中耳炎に至ることもあります。
鼓膜に穴があいていて、ときどき耳漏も出る状態は慢性中耳炎といいます。急性中耳炎を繰り返した結果のことが多いですが、外傷による鼓膜穿孔が自然にふさがらなかった場合などでも起こります。炎症が長期化するうちに、中耳の中の音を伝える小さな骨(耳小骨)や内耳にも炎症が及ぶことがあり、聞こえがだんだん悪くなることがあります。

このうち、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎について、各々の症状、原因、治療法について述べます。

急性中耳炎

アメリカの報告では生後1歳までにおよそ6割、3歳までにおよそ8割の小児が少なくとも1回は急性中耳炎にかかるといわれています。さらに3歳までに5割弱の小児が急性中耳炎を3回以上繰り返すことが報告されています。また、成人でも風邪をこじらせた後に発症することがあり、中には重症化して、内耳炎を併発する例もあります。

症状

耳の痛み、耳だれ、発熱などが主な症状ですが、いずれも必ずみられるとは限りません。先に抗菌薬をもらっていたりすると、発熱にまで至らないことも多いです。また乳幼児では、自ら痛みを訴えることができないので、強く泣いていたり、頻繁に耳をさわっているなどいつもと様子がおかしければ、急性中耳炎を疑って耳鼻科受診をお勧めします。

原因

発熱、鼻みず、せきなどの急性上気道炎の症状の後に発症することが多く、鼻やのどの奥(鼻咽腔といいます)でふえた細菌が、耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)を経由して中耳に感染を引き起こすことによって発症します。乳幼児で、保育園などで集団保育を受けている場合、急性上気道炎にかかりやすく、その経過中に急性中耳炎にかかることも多くなります。ウイルス性の感冒に引き続いて起こることが多くですが、急性中耳炎のほとんどは細菌単独の感染です。ウイルスは鼻咽腔の粘膜を障害して急性中耳炎をおこしやすくし、重症化させる原因になると考えられています。

治療法

細菌感染が原因ですので、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などの病原細菌を標的とした抗菌薬を、決められた期間、内服してもらいます。局所療法として点耳薬(耳に滴下するお薬)も併せて行うこともあります。
鼻炎や副鼻腔炎を合併していることが多く、急性中耳炎が軽快しても鼻の奥に病原菌がすぐにたまっているとまた急性中耳炎にかかってしまいます。すぐに再発させないためにも、鼻水を吸い取ったり、ネブライザー治療といった、お鼻の病気の治療も併せて行っていきます。

抗菌薬を内服開始しても下記のような状況の場合は、鼓膜に切開を加える治療(鼓膜切開)を併せて行うことも有効です。(※鼓膜は切っても、通常数日でふさがります。)

  • 鼓膜の奥に膿が充満しており、なかなか腫れが引かない場合。
  • 高熱が持続する場合
  • 耳の詰まり感、耳鳴り、聞こえにくさが強い場合。

特に成人の急性中耳炎で急性内耳炎を伴っている場合は、耳の詰まり感、耳鳴りが強い場合が多く、その場合は薬物治療に加えて鼓膜切開を早い時点で行った方が、後の経過がよくなることもあります。

治りにくい中耳炎(難治性中耳炎)について

抗菌薬治療を行うにもかかわらず急性中耳炎が治りきらずに中耳貯留液や鼓膜の赤みなどが続く状態(遷延性中耳炎)、急性中耳炎が治っても短期間に繰り返してかかる反復性中耳炎は治りにくい中耳炎として、問題になっています。
低年齢(2歳未満)で急性中耳炎にかかると、免疫能が未成熟ですので、抗菌薬治療をしているにもかかわらず、原因菌の除菌が十分に行えず、急性中耳炎が再発あるいは再燃しやすくなります。実際に反復性中耳炎を患っている子供のほとんどは生後2歳までに急性中耳炎にかかっています。
低年齢で集団保育を受けていると、鼻水がずっと出ている、のどに流れているといった鼻炎、副鼻腔炎の状態が続くことは珍しくありません。この場合、抗菌薬治療をうまく効果的に行う工夫として、鼻処置により鼻咽腔の原因菌を減らすことが大切です。
また、薬剤耐性菌が増えていることも背景にあります。耐性菌に対しては、抗菌薬の投与量を通常よりも増やす、それでも効かない時には新規の抗菌薬を使うなどの工夫をします。
そして、治療効果が出たかどうかは、中耳炎の場合は鼓膜の状態を観察して判断します。耳の症状がなくなっていても、まだ滲出液が残っている場合も多く、この場合は薬をやめても経過観察は必要です。再燃してしまった場合は、抗菌薬投与を再開することになります。こうして経過を見ていくのですが、難治性中耳炎の場合はやはり治療に難渋します。
その場合には、抗菌薬治療に頼る治療でなく、鼓膜に換気チューブを挿入する治療(チュービング)を行って、中耳の換気、貯留液の排泄を十分につけることが重要となります。

治療の注意点

急性中耳炎の治療では、自覚症状がよくなったからといって途中で通院をやめてしまわずに、鼓膜が健常の状態になるまで、きちんと通院していただくことが大切です。
特に乳幼児の場合は、発熱はなく、機嫌もよくなっているので、もう治ったと判断していると、まだ中耳炎が残っている場合があります。遷延性中耳炎では、普段の様子からはなかなか気づかれないで、急性中耳炎の症状の時だけ治療を受けるケースがありますが、遷延性中耳炎を放置したままで癒着性中耳炎に発展すると、治療困難な難聴を引き起こします。(次項の滲出性中耳炎の治療にも共通することですが、)子供の中耳炎治療では、癒着性中耳炎を予防して、大人になって難聴を残さないことが治療の目標です。何回も反復する場合などは特に、鼻もしっかり治療することが大事です。

慢性中耳炎

症状

鼓膜に穴が開いており、主な症状は急性感染時の耳だれ(耳漏)です。難聴を伴いますが、難聴の程度は病状によって様々です。
急性増悪期には耳漏は大量に出て、耳の外に流れることもありますが、普段は耳の中が湿っていても自覚上、何ともないことも多いです。
急性増悪を繰り返すと、聞こえが悪化したり、めまいやふらつきが生じます。髄膜炎や脳に膿瘍を引き起こすこともあります。
また、真珠腫性中耳炎を合併している場合は、知らぬ間に骨を溶解しながら炎症が進むため、めまいや顔面神経麻痺を引き起こすことがあり、手術が必要です。

原因

急性中耳炎で鼓膜に穴があいても、通常は炎症が軽快するとともに自然に閉じますが、何回も急性中耳炎が繰り返されると、同じところに穴が開き、閉じても非常に薄い鼓膜にしかならず、ついには穴が開いたままになってしまいます。こうなると、外耳道からも中耳腔へと細菌が簡単に侵入できるため、感染を繰り返しやすくなります。急性中耳炎の不完全な治療が原因になっていることが多いですが、その他の原因もあります。中でも好酸球性中耳炎は、アレルギー性の難治性の慢性中耳炎です。

治療について

急性増悪期の耳だれ(耳漏)に対しては、患部(鼓膜~外耳道)の洗浄、お薬を耳の中に滴下してしみこませる点耳(耳浴)のほか、急性増悪期では抗菌薬を内服してもらいます。
耳漏が一段落したら、聴力検査によって難聴の種類と程度を調べます。耳の骨のCT検査も併せて行うこともあります。
鼓膜穿孔が小さい場合は、外来治療で治癒可能な場合があります。大きな穿孔がある例では、聴力検査結果、画像検査の結果をもとに、手術によって聴力の改善が見込まれるかどうか検討します。聴力の改善が見込まれない場合も、穿孔閉鎖によって耳漏の停止が見込まれます。手術をご希望の方には提携病院を紹介させていただきます。
実際には手術まで希望されない方も多いのですが、その場合は点耳や耳洗浄で耳の状態をできるだけよく保てるようにいたします。
なお、鼓膜の状況、画像検査の結果等から真珠腫性中耳炎が疑われた場合には、手術治療が必要になりますので、提携病院を紹介させていただきます。

滲出性中耳炎

症状

中耳に貯留液(滲出液)がたまった状態であり、耳がつまった感じになって聞こえが悪くなります。
具体的には、登山したときや、飛行機搭乗時の気圧の変化時に感じるような耳づまり感があり、耳鳴りを伴う場合もあります。耳の中でザザッという水が流れる音がすることもあります。

通常、痛みを伴わないため、子供(特に幼児)の場合は周囲の大人が気付いてあげない限りなかなか発見されません。次のような症状が見られた場合は滲出性中耳炎の可能性があります。

  • テレビの音を大きくする
  • 呼びかけに対して反応が悪い
  • 大きな声でおしゃべりする

高齢者の場合、自覚症状があっても、加齢による難聴と思い込んであきらめてしまい、この疾患に気が付かない場合もあります。滲出性中耳炎による難聴は治療可能ですので、急に難聴を来した場合、特に耳づまり感がある場合は耳鼻科受診をお勧めいたします。

原因

中耳は耳管という器官で鼻の奥とつながって、その管を通して換気をしています。風邪などの炎症で耳管が正常に機能しない状態が続くと、中耳内の気圧を外界の気圧に合わせられなくなり、鼓膜がへこみ、続いて鼓膜の奥の中耳に滲出液がしみでてきます。風呂やプールの水が外から入っておこるのではありません。
飛行機に乗ったことで発症したり(気圧差が原因)、鼻の奥に腫瘍ができることによって滲出性中耳炎となるケースもあります。

風邪等の上気道炎の後にも発症しやすいです。
風邪ひきをきっかけに明らかな細菌感染が起こって強い炎症が中耳に及べば急性中耳炎として発症しますが、急性中耳炎には至らないまでも、滲出性中耳炎が発症することがあります。その場合は聞こえの低下、耳づまり感がなかなか取れないなどの症状があっても、中耳炎と気が付かないこともあるようです。
また、急性中耳炎が治っていく途中で滲出性中耳炎になることもあります。
急性中耳炎でたまった液体ははじめは膿性ですが、軽快するにつれて漿液性(水っぽい)に変わります。通常、貯留液は耳管から短期間で排泄されますが、耳管機能が低下している時にはなかなか排泄されず、滲出性中耳炎として治療を続けることになります。耳管機能のよくない、小児、高齢者に多く見られます。

治療について

鼻処置および吸入(ネブライザー)を行って、鼻の奥をきれいにし、たまっている液体の粘度を下げて排泄されやすくする薬、中耳の粘膜~鼻の粘膜の性状を改善する薬、鼻水を抑える薬、などで治療します。急性感染が疑われる場合には抗菌薬を用います。
また、耳管(耳と鼻を結ぶ管)に空気を送り、たまっている滲出液の排泄を促す、耳管通気という処置も行います。

これらの処置によってもなかなか改善しない場合には、鼓膜に小さな穴をあける(鼓膜穿刺)、または鼓膜切開が有効です。これを何回か試みてそれでも改善しない時は、鼓膜に換気チューブを挿入する治療(チュービング)を行うこともあります。

乳幼児の滲出性中耳炎の場合、中にはなかなか治らないものがあり(急性中耳炎の項参照)は、その場合はチュービングが有効です。手術自体は出血もなく、短時間で済むのですが、繊細な手技ですので、無理やり押さえつけて試みるより、全身麻酔管理のもとで行う方が標準的です。提携病院をご紹介いたします。1泊入院、あるいは日帰り手術が可能です。

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